公正証書は魔法の書類ではない

協議離婚において、金銭に関する取り決めがある場合には、離婚公正証書の作成を強く勧めてはいますが、なんでもかんでも公正証書で実現できるものではありません。

公正証書は魔法の書類ではありません。

例えば

「夫は二度と子供に近づかないようにする」

「夫は離婚の原因となった不倫相手と二度と合わないようにする」

というような条項を入れても公正証書でこのように人の行動を制限することはできません。

これは調停調書や裁判離婚での判決文でも同様です。

確かに高い証拠力、証明力、また債務者に対しての強い心理的効果を期待することができますが、公正証書で強制執行を行うことができる対象は、離婚公正証書の場合、ほとんどは金銭に関するものにしか強制執行をおこなうことができないのです。

その金銭の場合でも、一定の要件があり、強制執行できるものとできないものがあります。

ここでは、公正証書を作成するうえでの注意点と、公正証書の効果を見ていきましょう。

公正証書で強制執行を行えるのは金銭だけ

公正証書で強制執行を行うことができる要件は

  1. 一定金額の金銭の支払い、又は一定の数量の代替物、若しくは有価証券の給付を目的とする特定の請求であること
  2. 強制執行に服するという旨の文言(強制執行認諾約款)が記載されていること

という、2つの要件を満たさなければなりません。

さらに1については

  • 公正証書に全額又は数量が係数的、確定的に明記されている事
  • 利率と期限が定まっており、証書自体からその金額を算出できる事

ということを満たす必要があります。

つまり、公正証書を作成する時点で、金銭の額が確定していなければならのです。

例えば

「有価証券(株式等)を1万株の売却代金を支払う」

というものでは、株式は時価によって変動するため、金銭の額が確定していないため、この場合は強制執行を行うことはできません。

もちろん金銭以外でも契約を守らなければ、その点について追及することはできますが、強制執行を行えるのかどうかとは別の問題になります。

強制執行認諾約款

強制執行認諾約款とは

「金銭の支払いを怠った場合、強制的に自分の財産を差押えられてそこから、金銭を支払わされても文句を言わない」

という宣言をする、強制執行を可能にするため公正証書に記載する条項のことです。

この条項がなければ強制執行を行うことはできません。

公正証書の作成は間違いなく

信じられない話かもしれませんが、強制執行認諾約款のない離婚公正証書というものは存在します。

私自身も相談者からそのような公正証書を見せてもらったときは目を疑いました。

離婚の専門家であれば依頼者の希望があったり、希望がなかったとしても依頼者にアドバイスをして、強制執行認諾条項を必ず記載するようにするのが当然なのです。

しかし、この条項がない公正証書が存在するのは何故でしょう?

それは公証人は公務員だからです。

公務員は全ての人に公平であるということが大前提であるため、公証人は一定の人に肩入れをするようなことはありません。

公証人は公証役場に公正証書の作成を嘱託されたものを文章にするに過ぎないのです。

注)嘱託とは公証役場に公正証書の作成を依頼し作成してもらうことです。

つまり、依頼されたものを法的に誤りの無いように記載するのが職務であり、どのような条項を記載すればよいのかということを指導してくれるわけではありません。

なので強制執行認諾条項を記載してほしいと公証人に伝えなければ、この記載がされることはないのです。

指導をしてくれない公証人が悪いわけではなく、これは公務員として当然の職務なのです。

公正証書の作成時には交渉力をもって

このサイトをご覧になった方は、この強制執行認諾約款を記載せずに公正証書を作成するということはないでしょう。

しかし、債務者がこの強制執行認諾約款を記載することを拒否するようなことがあると、公証人は公正証書に記載することができません。

公証人は夫婦が合意したものを公正証書にするのが職務となります。

公証人が何らかの交渉の仕方のアドバイスや債務者の説得をしてくれるわけではありません。

専門家に依頼せずに交渉を進める場合は、しっかりと交渉力を身に着けて協議に挑みましょう。

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